世は楕円時代。
王者クリス・フルームやピエール・ローランなどが愛用する楕円リングは、今や一般サイクリストの間でもメジャーなものになってきています。
これを読んでいる方の中にも、「興味はある」「実際につけている」という方も多いのではないでしょうか。
そもそも楕円リングって何なの?
というか、そもそも楕円リングって何よ?という話ですが、その名の通りチェーンリングが真円ではなく楕円型をしているチェーンリングのこと。
「え、そんなんでちゃんと漕げるの?」と思いますが、実はこの形、ペダリングを考えると理論上では真円より効率が良いとされています。
簡単に説明すると、楕円リングでは常にチェーンにかかる歯数が一定ではなく、踏み込む時に一番力が入る位置(クランクが3~4時の時)で仮想最大歯数になるように、上死点と下死点を通過する際に仮想最小歯数になるように設計されています。
この場合は仮想最大歯数:56.5(4時の位置)
仮想最小歯数:51 (上死点&下死点)
つまり「力が入る位置ではパワーを使い、逆に入りにくい(踏んでも意味がない)位置では素早く通過させてしまおう」という構想から生まれた、ペダルを踏むパワーをより効率的に自転車に伝えることが出来る優れもの。
となれば、早速試してみるしかありません!
が、しかしこの楕円リングはRotorやO.SYMETRIC、ABUSOLUTE BLACKなど多くのメーカーがこぞって販売しており、どれがいいか分からない状態。
僕も興味はあったものの、具体的に候補を絞れないまま月日が過ぎていました。
バッロクギアとの出会い
と、そんな風に踏み切れないまま過ごしていたある秋のこと。
TLにこんなツイートが流れてきました。
……..は?めちゃくちゃカッコイイやんけ。(キレ気味)
なにこのアウターリングめちゃくちゃカッコイイんですけど!!!??なにこれ!!?
と驚愕。
ふむふむそうか、やっぱり楕円はRotorのQ-RINHGSだ!!と思いAmazonで値段を調べると、
高すぎワロタwww…..ワロタ…….。
あまりの値段に即座に冷静になり、続いて自分の懐具合と相談した結果、「….だ、楕円はしばらく見送りでいいや」という結論に達しました。
ということで、その時は結局楕円リング導入をスルー。楕円リング導入計画は無期限延期に。
が。
その1、2ヶ月くらい後に、今度はむぎさんが装備変更ツイート。
「バロックギア」という名前は聞いたことがありませんが、どうやらこれも楕円リングの一種らしい。
しかし、僕がなにより心惹かれたのはそのビジュアル。
シマノの黒いアウターリングの隙間から顔をのぞかせるメタリックな赤のインナーリングに、一瞬で心を奪われてしまいました。
それにリング表側に刻まれた白い文字列もカッコイイです。また、アウターリングの販売は無く、インナーリングのみの販売です。
気になって早速調べてみると、実はこのバロックギア、楕円形ではなく「非円形ギア」ということが判明。
そしてその理由は、「人によってペダリングは違うから」ということらしい。(詳しくはSMITHのHPを参照してください。)
バロックギアの構想
ただそれだとあまりレビューにならないので、簡単にその構想を解説。
まずはこちらのグラフをご覧ください。
ただそれだとあまりレビューにならないので、簡単にその構想を解説。
まずはこちらのグラフをご覧ください。
実はこれ、クランクの位置と、かかるトルクの大きさを連続的に表したグラフ。
薄い灰色がペダリングの理想形(クランクが9時の位置で最大、6~12時はトルクはゼロ)であり、その上に何本も引かれている線が実際のペダリングデータです。
グラフを見てみると、本来はクランクが3時の位置で最大にならなければいけないのに対し、実測値は微妙に遅れて3~5時の間でピークを迎えています。
これでは完全に踏み遅れており、例え楕円リングを使っていたとしても、パワーを効率的に伝えられていません。
加えて、そうそう簡単に染みついてしまったペダリングの「癖」を直すことも難しい。
しかし、これに待ったを掛けたのがバロックギア。
従来の「ライダーが機材に合わせる」という考え方ではなく、「機材をライダーに合わせる」という考え方。
つまり、
踏み遅れるなら、そこに仮想最大歯数を持って来ればいいじゃない!
ということです。
ということで、バロックギアは各個人のペダリング特性(トルクが最大になるタイミング)に合わせて、90°~120°の4種類が用意されています。
しっかりと90°(クランクが3時の位置)で踏める人は90°のものを、踏み遅れる人は100°~120°から自分に合ったものを選択することが出来るのです。
つまり無理矢理ペダリングを矯正せずとも、自分が一番踏み込めるタイミングで仮想最大歯数を踏めるという事。
というように調べれば調べるほど、バロックギアの魅力があふれ出てきて止まらない状態に…….。
換装!そしてその効果とは!?
しかし、最初に書いたように気になるのはそのお値段。
Q-RINGSのように高額だと諦めざるをえませんが……..
イケるッッッ!!!!
………で、でも、本当にポチるか悩m
………。
…………..。
……………………。
ポチったったwwww
そして届くの早い!
ということで、早速換装!
アウターリングの隙間から見える赤いメタリックなリングが映えますね。
フレームの色を考えるとあまり合わないかな?と思いましたが、差し色のようになって意外とすんなり。トリコロールカラーのスペーサーにも赤が入っていますし、フレームのベースカラーは黒だったのが良かったみたいです。
ところで、このバロックギア。着けてからずっと「何かに似てるなー…..なんだろう」と考えていたのですが、ここでようやく判明。
そうです、レーシングカーなどで見られるブレーキディスクの赤熱化です。
では実走ではどうなのか?と、少し外で走ってみると、やはりクランク3時付近で少し重くなるのを感じました。ただ、踏めないというほどではなく、「ここが踏みどころだよ!」と教えてもらっている感じ。そしてそこを過ぎると、下死点付近でスッと力が抜けるように後ろへ流れてくれます。
非真円系は初めてでしたが、強烈な違和感を感じることはなくすぐに慣れることが出来ました。
また、心配していた変速性能ですが、5ヶ月使用してきてチェーンが落ちたことは2回くらいでした。ヒルクライム中など常に強いトルクがかかっている状況でも、普通に変速は出来るのでそこはあまり心配しなくても大丈夫だと思います。
しかし、本格的な峠はまだ未経験。元々ヒルクライム用に導入したのですし、やはり峠で試してみたい!
ということで、早速年明けに神奈川の魔境・厳道峠に行ってみると…..
無事死亡しました(ニッコリ)
もう無理、ガンドゥーチェ二度と行かないからな(決意)
というのも、バロックギアのみに限らず非真円系のチェーンリングは、ペダリング効率を高める代わりに「低ケイデンスでは拷問になる」という特性があります。
例えば僕が使用しているのは、
34T ±2 90°
という型。
これは
・仮想最大歯数が36(34+2)
・仮想最小歯数が32(34-2)
・クランク角度が90°で歯数が最大、180°で最小
ということです。
つまり、真円ではフロント34T、リア28Tの組み合わせを使えていましたが、バロックギアにしたことで踏み込むタイミングで必ずフロント36Tを踏まなければいけないという事になります。
体感的には10~12%までは平気ですが、それを越えてくると急に+2の歯数アップが牙を剥いてくる感じ。
なので、斜度が15%から落ちずに段々とケイデンスが落ちてきてしまう厳道峠は、ハッキリ言って相性が最悪だったのだと思います。
ただ、このバロックギアはデメリットを補って余りあるほどのメリットがあります。それは、
・登りでは踏むタイミングがしっかりと分かるので、リズムが作りやすい
・カッコイイ
・ちょっと速くなる
・すごいカッコイイ
・めっちゃカッコイイ
・ケイデンスが上がる
・超ハイパーカッコイイ
という感じ。
ただ、これだと本当にボキャ貧なので、1つ例を出して解説します。
まずこちらは真円で登った際の聖蹟桜ヶ丘のいろは坂のデータ。
平均スピードは15.3km/hで平均ケイデンスは85です。
最初ケイデンスは高いですが、後半になってから徐々にケイデンスが維持できなくなっていますね。
一方こちらはバロックギアでのデータ。
平均速度は17.2km/h、平均ケイデンスは91。
真円では後半のケイデンスは60~70台まで下がっていたのに対して、こちらは70~80台を維持できています。
よって平均ケイデンスは6アップ、平均速度は1.9kmアップという結果に。
また、ワット数を計算するサイトを参考にすると、真円での出力が267Wなのに対してバロックギアは307Wと、なんと40Wの出力アップです!この40Wが大きいのか小さいのかは正直分かっていませんが、出力アップというバロックギアの宣伝文句の通りだったのは嬉しいポイントです。
ということで、わずかではありますが、バロックギアの効果を感じることが出来ました。
価格も他の楕円リング等と比べると比較的安い部類に入るので、興味がある人はぜひ試してみてはいかかでしょうか。
特に効果を感じる事が出来なくても、シンプルかつビジュアルが良いので愛車がカッコよくなると思いますよ!